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2026.3.31

介護老人保健施設入所者に係る往診・通院(対診)の取扱いが2026年6月から改正へ

― 特定薬剤の処方せん交付が新たに認められるケースを追加 ―
厚生労働省は、令和8年6月1日から「介護老人保健施設入所者に係る往診及び通院(対診)について」を改正し、入所者に対する処方せんの取扱いを一部見直すこととした。
今回の改正は、評価療養・選定療養等の告示改正に伴うものであり、特定の薬剤について、例外的に処方せん交付を認める範囲が拡大される点が特徴である。
添付資料には、
「介護老人保健施設入所者を往診・通院により診療した保険医は…処方せんを交付してはならないこと。ただし、以下1から11に掲げる場合はこの限りではない」
と記載されており、今回の改正ではこの“例外規定”の内容が拡充されている。
 
1.改正のポイント
今回の改正は、処方せん交付が認められる特例ケースの追加・拡大が中心である。
従来は、老健入所者に対して外部の保険薬局で薬剤を受け取るための処方せんを交付することは原則禁止されていたが、特定の治療薬については例外が認められていた。
今回の改正により、その例外の範囲が広がった。
 
2.新たに追加された特例(新設項目)
(1)免疫・アレルギー疾患に対するJAK阻害薬・生物学的製剤
新たに、入所前から継続して投与されており、他の治療薬で代替できない場合に限り、以下の薬剤の処方せん交付が認められることとなった。
・JAK阻害薬
・生物学的製剤
添付資料には、
「免疫・アレルギー疾患の治療のために入所前から投与が継続されており、他の治療薬で代替不能な者に対してJAK阻害薬又は生物学的製剤の支給を目的とする処方せんを交付する場合」と明記されている。
これにより、リウマチや炎症性腸疾患などで高度な薬物治療を継続している入所者への対応が柔軟になる。
 
3.既存項目の拡大(腎性貧血治療薬の範囲拡大)
従来、在宅血液透析・在宅腹膜透析を行う入所者に対しては、エリスロポエチンまたはダルベポエチンの処方せん交付が認められていた。
今回の改正では、対象薬剤が以下のように拡大された。
・エリスロポエチン
・ダルベポエチン
・エポエチンベータペゴル(新規追加)
・HIF-PH阻害剤(新規追加)
添付資料には、
「腎性貧血状態にある者に対してエリスロポエチン、ダルベポエチン、エポエチンベータペゴル又はHIF-PH阻害剤の支給を目的とする処方せん」と記載されており、治療選択肢が大きく広がったことが分かる。
 
4.血友病等に対する医薬品の対象範囲の拡大
従来は「血友病の患者」に限定されていたが、改正後は血友病等の患者と表現が拡大され、対象疾患の幅が広がった。
添付資料では、「血友病等の患者に対して使用する医薬品(血友病等の患者における出血傾向の抑制の効能又は効果を有するものに限る)」とされており、より広い疾患群に対応できるようになった。
 
5.今回の改正の意義
今回の見直しは、老健入所者の医療ニーズの高度化に対応するためのものであり、以下の点で意義が大きい。
・高度な薬物治療を継続する入所者への対応が可能になる
・腎性貧血治療薬の選択肢が拡大し、より適切な治療が行える
・血友病等の希少疾患にも柔軟に対応できる
・医療の継続性を確保しつつ、施設内での安全な薬剤管理が可能となる
老健施設は医療と介護の中間施設であり、入所者の医療的ニーズは年々多様化している。
今回の改正は、そうした現場の実情に即した制度整備であると言える。