2025.8.1
「入居お祝い金」が施設選びに影響?老人ホーム紹介業の課題と現状
高齢者の住まい選びにおいて、老人ホーム紹介業者が提供する「入居お祝い金」が意思決定に影響を与えているという実態が明らかになった。これは、施設選びの公平性や中立性を揺るがす可能性があるとして、業界内外から懸念の声が上がっている。
〇入居お祝い金とは?
紹介業者が施設側から得る紹介手数料の一部を、入居者やその家族に「お祝い金」として還元する仕組みで、金額は数千円〜最大10万円程度とされ、広告などで大きく打ち出されるケースもある。
主に検索サイトや紹介会社を通じて契約が成立した場合に支払われる。
〇調査結果から見える影響
「LIFULL介護」の調査によると、入居お祝い金を受け取った人の多くが「施設選びに影響した」と回答。
・20代:87.9%
・30代:82.2%
・40代:74.0%
・70代以上でも32.4%が影響を受けたと回答
紹介会社から特定の施設を「強く勧められた」経験がある人は72.3%にのぼる。
入居後に「転居を考えたことがある」と答えた割合も高く、不満の声も寄せられている。
〇懸念される問題点
・利用者の意思決定が「金銭的インセンティブ」によって歪められる可能性
・本来の紹介業の価値(相談の質や提案力)が損なわれる懸念
・公的資金(介護保険・医療保険)を原資とする施設収益が、お祝い金に流用される構造への疑問
〇業界の対応と今後の課題
・高齢者住まい事業者団体連合会(高住連)は「届出公表制度」を創設し、紹介業者の健全性を担保
・成約後のお祝い金やキャッシュバックによる顧客誘導を「倫理に反する行為」と位置づけ
・紹介業者の質の向上を目的に、eラーニングやコンプライアンスマニュアルの展開も進行中
〇まとめ
「入居お祝い金」は一見魅力的な制度に見えるが、施設選びの本質を見失わせるリスクも孕んでいる。高齢者やその家族が安心して住まいを選べるよう、紹介業者にはより高い倫理観と透明性が求められている。