2025.9.10
過疎地の訪問介護に「包括報酬」導入へ──厚労省が新制度を提案、事業所の選択制で体制維持を図る
厚生労働省は2027年度の介護保険制度改正に向けて、過疎地・中山間地域における訪問介護サービスの持続可能性を高めるため、「包括報酬制度」の導入を提案した。
2025年9月8日に開催された社会保障審議会・介護保険部会では、人口減少地域における介護事業所の経営安定化を目的とした新たな報酬体系の創設が議題となった。
●制度の背景:出来高報酬の限界
現在の訪問介護報酬は「出来高制」が基本であり、サービス提供の回数や時間に応じて報酬が支払われる。しかし、過疎地では以下のような課題が顕在化している。
・利用者の急なキャンセルによる収入減
・長距離移動による非効率な訪問
・季節による繁閑差
・利用者数の減少による経営不安定化
これらの要因により、事業所の撤退やサービス縮小が相次ぎ、地域の介護基盤が揺らいでいる。
●包括報酬制度の概要
厚労省が提案する新制度では、対象地域の事業所が以下のいずれかを選択できるようになる。
①出来高報酬:サービス提供量に応じての報酬 ⇒利用者負担が軽く、柔軟性が高い。
②包括報酬 :月単位で定額報酬を支給 ⇒経営の予見性が高く、安定運営が可能。
包括報酬では、利用者数や地域特性に応じて月額報酬が設定されるため、事業所は急なキャンセルや訪問回数の変動に左右されにくくなる。
●懸念と課題
審議会では、委員から以下のような懸念も示された。
・「1回あたりの料金が上がる可能性があり、利用者に不利ではないか」
・「訪問回数が減ることで、サービスの質が低下する恐れがある」
これに対し厚労省は、制度設計においてサービスの質担保や利用者保護の観点を重視する方針を示した。
●対象地域と導入時期
対象となるのは、以下のような地域を想定している。
・離島・豪雪地帯・中山間地域
・過疎地域自立促進特別措置法に基づく市町村
・特別地域加算の対象地域
導入は2027年度を目標としており、今後の審議を経て制度の詳細が固められる予定である。