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2025.9.10

介護保険制度の再構築へ──全労連が財源構成の改編と処遇改善を求める請願署名を開始

全国労働組合総連合(全労連)は2025年9月、介護保険制度の抜本改善と介護職員の大幅な処遇改善を求める請願署名活動を開始した。署名は25万筆を目標に、今秋の国会提出を予定している。
請願の中心には、介護保険制度の「財源構成の改編」と「処遇改善にかかる財源のあり方」が据えられており、制度創設から25年を経た今、国の責任と公費投入の在り方が改めて問われている。
 
●財源構成の改編:国庫負担割合の引き上げを要求
介護保険制度の財源は、以下の3つで構成されている。
①保険料  (50%):40歳以上の国民が支払う介護保険料
②国庫負担 (25%):国の公費
③地方負担金(25%):都道府県の公費―都道府県(12.5%)、市町村(12.5%)
全労連はこのうち、国の負担割合を大幅に引き上げるよう求めている。背景には、以下のような課題がある。
・高齢化の進行により、保険料負担が右肩上がり(2024年度平均月額6,225円)
・物価高騰・年金減額により、高齢者の生活負担が限界
・地方自治体の財政力格差により、サービス水準に地域差が生じている
全労連は「介護は国の責任で保障すべき社会的インフラ」であると位置づけ、財源の中心を保険料から国庫負担へとシフトさせるよう訴えている。
 
●処遇改善の財源:全額国費による賃金引き上げを提案
介護職員の賃金は、2024年度時点で全産業平均と月額8.3万円の格差があるとされている。この格差は年々拡大しており、介護離職や人材流出の要因となっている。
全労連は以下のような処遇改善策を請願項目に盛り込んでいる。
①すべての介護職員の賃金を全産業平均まで引き上げる
②その財源は全額国庫負担とする
③人員配置基準の引き上げと一人夜勤の解消を実現する
この提案は、制度創設当初の処遇改善加算が国庫補助金で賄われていた頃への「原点回帰」とも言える。介護サービスの土台が「人」である以上、安定した財源による処遇整備は不可欠だと全労連は主張している。
 
●制度の持続可能性と国民的合意
全労連の請願は、単なる財源論にとどまらず、介護保険制度の理念そのものを問い直すものでもある。請願文では「保険料を払っていても、必要な時に必要な介護が受けられない。これでは国家的保険詐欺だ」と強い言葉で制度の現状を批判している。
一方で、国庫負担の拡大は税制全体の見直しを伴う可能性があり、消費税との関係や世代間の負担調整など、国民的な議論が不可欠となる。