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2025.10.6

介護現場の危機に警鐘 医労連が人員配置基準の引き上げを強く要請

日本医療労働組合連合会(医労連)は2025年10月2日、都内で記者会見を開き、介護施設における人員配置基準の引き上げを政府に強く求めた。介護職員の過重労働とサービス品質の低下が深刻化する中、医労連は「AIやロボットではなく、人によるケアの充実こそが急務である」と訴えている。
 
●現場の声:「今の体制では良い介護はできない」
医労連は全国22道府県の介護・福祉施設で働く935人を対象にアンケート調査を実施。その結果、82.2%が「現在の人員体制では十分なサービスが提供できない」と回答し、90.5%が「職員を増やしてほしい」と回答した。この結果は、現場の切実な声を浮き彫りにしている。
北海道の労組担当者は「夜勤時に仮眠者が出ると、実質ワンオペ状態になる。事故防止のために利用者の行動を制限せざるを得ず、職員は『これがやりたかった介護なのか』と自問するようになっている」と語った。
 
●現行基準の限界と実態
現在、国は「利用者3人に対し職員1人以上」の配置基準を設けているが、医労連はこの基準が現場の実態に合っていないと指摘する。例えば、48人の利用者に対して16人の職員が必要とされるが、シフトや休暇を考慮すると、実際には1人で数十人を対応する時間帯が生じているという。
医労連中央副執行委員長の森田進氏は「机上の空論ではなく、実働ベースでの人員配置が必要だ」と述べ、人員配置基準を2対1へ引き上げるべきだと主張した。
 
●賃金と処遇の改善も不可欠
人員増加と並行して、介護職員の賃金引き上げも医労連の重要な要求事項である。調査では「スーパーの店員より時給が低い」「若者が介護職に魅力を感じられない」といった声が寄せられ、処遇改善の必要性が強調された。
医労連は、全産業平均並みの賃金水準への引き上げを即時に実施し、将来的には職務に見合った報酬体系の確立を目指すべきだとしている。
 
●まとめ:人を増やすことで介護の質を守る
医労連の主張は、介護現場の実態に即した政策転換を求めるものである。テクノロジーによる効率化だけでは限界があり、「人によるケア」の価値を再評価する必要がある。人員配置基準の引き上げと賃金改善は、介護の質と職員の尊厳を守るための不可欠な施策である。
今後、政府・自治体がこの声にどう応えるかが、介護制度の持続可能性を左右する重要な分岐点となる。