2025.10.29
介護事業者に対しカスハラ対応を義務付け
厚生労働省は、すべての介護事業者に対しカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」という)への対応を義務付ける方針を示した。
2027年度の介護報酬改定を見据え、制度改正が進められる見通しである。
厚生労働省は2025年10月27日、社会保障審議会・介護保険部会において、利用者及びその家族によるカスハラへの対応をすべての介護事業者に義務付ける方針を提案し、大筋で了承を得た。
この方針は、同年6月に成立した改正労働施策総合推進法に基づくものであり、事業者に対し雇用管理上の措置義務を課す内容となっている。
対象となるのは、訪問介護、通所介護、施設サービスなど、介護保険制度下で運営されるすべての介護サービス事業者である。
事業規模の大小を問わず、全国の介護現場においてカスハラ対策が求められることとなる。
厚生労働省は、2021年度の介護報酬改定において既にパワーハラスメント及びセクシャルハラスメントへの対応を義務付けており、今回の方針はその延長線上に位置づけられる。
今後は、対応マニュアルの見直し、事業者への周知徹底、研修の充実など、具体的な施策が検討される予定である。
審議会では、認知症や精神疾患を有する利用者への対応において、制度設計やマニュアル作成に十分な配慮が必要であるとの意見も出された。
介護現場における「利用者本位」の理念と「職員の尊厳」の両立が、今後の制度設計における重要な課題となる。
本方針は、介護人材の確保と定着を図る上でも重要な転換点である。
職員が安心して働ける環境の整備は、地域包括ケアシステムの推進に不可欠であり、制度改正を通じた現場支援の強化が期待される。