2025.11.11
介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン
厚生労働省は令和7年11月、「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」を策定し、全国の介護事業所に対して周知を開始した。
本ガイドラインは、介護保険施設をはじめとする居住系・居宅系サービス事業所において、事故の未然防止と発生時の迅速かつ適切な対応を図るための指針として位置づけられている。
高齢者の要介護度の上昇や認知症高齢者の増加、介護テクノロジーの進展など、介護現場を取り巻く環境の変化に対応する必要性が高まっていることを背景として策定されたものである。
ガイドラインの主な構成は以下のとおりである。
・リスクマネジメントの基本理念
利用者の尊厳保持と自己決定の尊重を前提としつつ、安全なサービス提供体制の構築を目指す。
・事故予防の体制整備
事故防止委員会の設置、職員研修の実施、ヒヤリ・ハット事例の共有など、組織的な取り組みを推進する。
・事故発生時の対応
迅速な初動対応、原因分析、再発防止策の策定と実施、関係者への説明責任の履行を求める。
・自治体との連携
事業所の安全管理状況の把握と指導に資する情報提供を含む。
また、ガイドラインには転倒・誤嚥・誤薬・介護機器の誤操作等、事故種別ごとの具体的な対応事例が盛り込まれており、現場職員が参照しやすい構成となっている。
これにより、事業所間での対応格差の是正と、継続的な安全文化の醸成が期待されている。
本指針は、平成24年度に策定された「特別養護老人ホームにおける介護事故予防ガイドライン」を基礎としつつ、令和6年度老人保健健康増進等事業の成果を踏まえて全面的に改訂されたものである。
今後、各事業所はPDCAサイクルに基づくリスクマネジメント体制の強化を求められる。