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2025.11.19

介護報酬の臨時改定

政府は介護職員の処遇改善を図るため、2026年度に介護報酬の臨時改定を実施する方針を決定した。
介護報酬は原則として3年に一度改定される制度であるが、現場の人材不足と賃金格差の拡大を受け、今回の改定は異例の前倒し措置である。
 
厚生労働省の統計によれば、2023年時点で介護職員数は制度開始以来初めて減少に転じ、全産業平均賃金との差は約8万円に達している。
この状況は介護人材の流出を加速させ、サービス提供体制の維持を困難にしている。
政府はこの危機的状況を踏まえ、補正予算による「つなぎ支援」と併せて臨時改定を行うことで、現場の安定化を図る構えである。
 
臨時改定の焦点は三つである。
第一に賃上げの規模である。十分な水準に達しなければ、介護職員の確保は困難であり、現場の不満が再燃することは必至である。
第二に賃上げの対象範囲である。居宅介護支援のケアマネジャーなど人手不足が顕著な職種への対応が不可欠である。
第三に事業所・施設への支援の有無である。物価高騰により経営環境が悪化しているため、賃上げ以外の補助策を求める声が強い。
 
今回の臨時改定は、介護報酬制度の運用における大きな転換点である。
従来の3年サイクルを破り、制度の柔軟性を示すものであると同時に、社会保障財源の確保という課題を浮き彫りにしている。
財政出動の優先順位をめぐる政治的駆け引きは一層激化することが予想される。
結論として、介護報酬の臨時改定は介護職員の処遇改善を目的とした緊急措置であり、介護現場の持続可能性を左右する重要な政策である。
今後の議論は、賃上げの具体的規模、対象範囲、事業所支援の在り方に集中することになるであろう。